1月某日、山口県下関市に旅行してきました。下関といえば「ふぐ」。「ふぐ」といえば「春帆楼」です。
春帆楼と聞くと、「ふぐ専門の料亭でしょ」と思われる方が多いかと。それはそれで間違いではないんだけれど、元々は山口県下関市にある老舗旅館なのです。
春帆楼の歴史は古く、明治14〜15年まで遡ります。ざっくり説明すると、蘭医の藤野玄洋がこの地で医院を開業。玄洋没後、妻みちに、伊藤博文が割烹旅館を開くことを勧めたことにより始まります。
春うららかな眼下の海にたくさんの帆船が浮かんでいる様子から「春帆楼」という屋号を伊藤博文が名付けたそうです。
明治21年、豊臣秀吉以来の河豚禁食令は当時まで引き継がれていましたが、伊藤博文が当時の山口県命(知事)原保太郎に命じて禁を解かせ、春帆楼がふぐ料理公許第一号として広く知られるようになりました。
そして明治27年、日清講和会議が春帆楼のニ階大広間で行われ歴史の舞台にもなりました。
テレビなどで春帆楼◯◯店でふぐコースをいただきます。みたいなグルメ番組を見かけますが、このような歴史背景を知れば、また見方も変わってくるのではないかと。
しかし、伊藤博文さまさまのおかげで、美味しいふぐが食べれるかと思うと感謝しかないです。
それでは現実社会から離れ、自動ドアという時空をこえる装置を通り夢の世界へいざ!
冗談はさておき「春帆楼」の達筆な文字が老舗の雰囲気をバンバン放っています。
自動ドアをくぐり抜けフロントで予約の名前を告げます。フロントの女性が「お掛けになって少々お待ち下さい」と。内線電話で◯◯様ご到着されました。誰か呼んでいる様子。その間ロービーで数分待機。待っている間に伊藤博文の書など見学。
そうこうしていると仲居さんがお迎えに「お部屋へご案内します」。いつものことなんだけれど、「お荷物お持ちします」と声をかけていただくと、恐縮してしまい「いえいえ自分で持ちますから」と反射的に断ってしまうんだけど、仲居さんもお仕事なので荷物を持たないと上司に怒られてしまうかもしれない。と、いろいろ考えてしまいます。
今後はお荷物お持ちします。と声をかけていただけたら、パートナーに「持っていただいたら」と僕が声をかけるようにしようと思った次第。コレなんの決意表明?
そんな考えごとをしながら、仲居さんのあとに続き、フロントよこのエレベーターで3階へ。エレベーターを降り、非常口の確認をしたのちに案内されたのは、一番奥の角部屋「環」と名のついた部屋でした。
部屋の入口から玄関を見た写真。玄関入ってまっさきに思ったのが「廊下が長い」。
この長い廊下のせい?で食事のときに仲居さんにご迷惑をかけてしまいました。食事の時間が近づいたころ、部屋の電話がチリンと鳴り「玄関でお声をおかけしたのですが…」。
特に部屋で騒いでいた訳ではないけれど、お酒も入り、少し話し声が大きくなっていたのかも。仲居さんの声がまったく聞こえていませんでした。申し訳ない。
ところ変わってこちらは部屋の様子。部屋に入ってみると「まぁまぁの広さですね」。そこには12.5畳の和室が広がっていました。
部屋の中心にテーブル一台、座椅子が二台。あとは部屋の隅っこに小さなゴミ箱がひとつ。
角度を変えた写真を一枚。こうやって見ても一般的によくある旅館の和室です。32インチ?37インチ?ほどの液晶テレビと電話があるのみ。
広縁の横幅が少し狭い気もしますが、ここは一人で物思いに耽るスペースなので、このぐらいの広さがシックリくるかと。ほどよい狭さに居心地の良さを感じるときもありますでしょう。
部屋の真ん中から外を眺めると、日清講和記念館の屋根で視界が遮られるため、あまりよい展望とはいえません。とは言いましても、別に景色を楽しむためにこちらのお宿を選んだ訳ではないので、まったく問題ありません。
「外から直接お部屋の中が見えないので警備上これはこれで……」と仲居さん。
春帆楼のウェブサイトによれば
昭和33年、昭和天皇・皇后両陛下ご宿泊。(関門国道トンネル開通時)
昭和38年、皇太子(現天皇陛下)夫婦ご宿泊。(山口国体臨席時)
昭和38年、昭和天皇・皇后両陛下ご宿泊。(山口国体開会式)
と記載されています。
それにしては質素な部屋だな。と思いながら襖を開けてみてビックリ。ベッドルームがございました。廊下が長かった分だけ、ベッドルームの奥行きもあります。あたりまえか。
少し硬めのベッドに横たわりながら写真を1枚。ベッドルームに何インチかわからない大きなテレビがありました。あと、空気清浄機とズボンプレッサーが設置してあります。
羽毛布団が暖かすぎて、朝まで寝てしまいそうなので起床。こんな素敵な部屋に滞在できるのに居眠りだなんてもったいない。
居眠りはしませんでしたが、夜はぐっすり眠ったようです。深夜に携帯電話のアラームが爆音で鳴り響いたらしいのですが、犯人の僕はまったく起きるそぶりもみせず爆睡を決め込んでいたんだとか。快眠できる寝具でした。
椅子とテーブル、ポットには冷たいお水。あとマッサージチェアまで。
日頃マッサージチェアなんて利用することがないので、ここぞとばかり一時間近くゴリゴリと全身をマッサージしてみたら、2日後に腰が強烈に痛くなりました。何事もほどほどが一番。
廊下に戻ってクローゼットの中を覗いてみます。浴衣にタオルなど必要最低限の物は用意されています。お部屋の金庫を利用する人がどの程度いるのかはわかりませんが、むかしながらの金庫が設置してあります。
こちらは洗面ルームです。ここでお化粧をする女性がいるのかは男性の僕にはわかりませんが、少し照明が暗いような気もします。ベッドルームに大きな鏡台があるから、あちらを利用するのかな。
アメニティは必要最低限の品揃え。なぜにバブ!と思われた方にご説明しますと、こちらのお宿は温泉ではないのでバブで代用でございます。
温泉ではありませんが、無料で利用できる家族風呂が2つあり、そちらを利用することも可能です。
部屋のお風呂は、見た目はこじんまりとしていますが、じっさいに入ってみるとそこそこ広く、大人が二人で入ってもそれなりに余裕があるくらいの広さ。
シャンプー・コンディショナー・ボディーソープはボトルタイプの物が置いてあります。
再び部屋に舞い戻り外の風景をパシャリと一枚。この角度からだと「春うららかな眼下の海にたくさんの帆船が浮かんでいる様子」を眺めることができます。(21世紀なので帆船はなかなか通らないとは思うけれど)
広縁の椅子に腰掛け、関門海峡を大型船舶が滑るように進んでいくのを眺めます。しかし、関門海峡めっちゃ船舶通るやん。これほどまでに通行量が多いとは予想していませんでした。
ここで一服。仲居さんが持ってきてくれた、老舗松琴堂のあわゆきとお抹茶をいただきます。
お抹茶を飲みながら、仲居さんにいただいた3枚の紙を眺めます。
1枚は山口県出身の8人の歴代内閣総理大臣の書がロビーに展示してある説明。
1枚は春帆楼界隈の観光の見どころをマップに説明書をまとめたもの。
1枚は下関を通る大型船の入航予定を時間、船名、船籍、総トン数などを一覧にしたもの。
お茶を飲み終えて飲みたりな方はスターバックスコーヒーを飲むこともできます。(有料)
甘いものが食べたい方は冷凍庫にハーゲンダッツをご用意しております。(有料)
温泉好きの方は、「温泉が無い!」というだけでかなりネックになるとは思いますが、そこは潔く諦めるしかないかと。(我らにはバブがついているじゃないか!)
正直、僕も温泉が無いということでかなり悩みました。けれど、そこは天下の春帆楼。人生で一度は宿泊してみたい!
下関に宿泊することが決定している方は春帆楼で間違いないでしょう。お料理はふぐのコースが食べれる訳ですし、皇室が利用するような老舗旅館に宿泊できるので、このお値段は高くないように思います。
春帆楼に宿泊するかを悩んでいる方が当ブログにたどり着き、宿泊への後押しができたのならたいへん嬉しく思います。それでは、あなたの下関旅行が素敵な旅になりますように。